フランス・オクシタニ地方ライドその4.2
ツールドフランス2025が7月5日に開幕してすでに9日が経過した。16日(11日目)に開催される第11ステージは、ブレロの勤務地であるトゥールーズが舞台となっている。ブレロは、そのコースの一部を愛機で辿ってみようを思い立った。
ライド実施日は革命祭(Le 14 Juillet)の日である7月14日にした。月曜日だが祝日で勤務先は閉まっているからである。設定したコースは、モンラベ(Montrabe)駅まで国鉄で輪行し、バジエージュ(Baziège)駅をゴールとしてそこからまた輪行でトゥールーズまで戻ってくるというコースである。ツールのコースに入るのは、ラヴァレット(Lavalette)というところからになる。バジエージュ手前のフルケヴォー(Fourquevaux)というところまでが、今回ブレロが辿るツールのコースということになる。ツールでは、フルケヴォーを左折してしばらく県道を走ってからバジエージュを通りすぎるというコースが設定されている。しかしブレロは交通量の多い県道を走りたくなかったので、フルケヴォーを左折せずにモンロール(Montlaur)まで丘陵を下りるというルートにした。ツール第11ステージの総距離は約157キロであるが、今回ブレロが走るのはその5分の1にも満たない距離になる。
当日、妻氏とブレロ3号も一緒に家を出て同じ電車に乗ったが、サイクリングに行くブレロと違って、彼らの目的は革命祭のパレードを見ることであった。乗り換えの電車に乗るブレロは、彼らとトゥールーズ駅で別れた。ほぼ正午にモンラベ駅に到着し、出発。
ツール公式によると第11ステージのコースは平坦(plat)タイプ。とくにブレロが走った区間内には4級山岳すらない。それでも丘陵はたくさんあって、ブロンプトン乗りにとっては決して平坦なコースではない。ただ、普段からたくさん乗る人であれば、最初から最後まで足をつかずにブロンプトン(S6L)で当該区間を踏破することも可能ではないかと思う。
しかし、ブレロが本格的にライドするのはほぼ1ヵ月半ぶりだ。その間、まったく登坂ライドをしていなかったため、ブレロは最初の方の丘陵を登るのにすっかり足を使い切ってしまった。したがって、後半部分の丘陵はすべからく自転車を押して登ることに。一度、後ろから追い抜いていく車に「邪魔だよ!」とクラクションを鳴らされてしまった*。くそう。
登坂を考えて荷物を軽くしたかったブレロは、スタートの際に50clのドリンクしか保持しなかったのだが、これが完全に失敗だった。はっきりいって7月のトゥールーズの太陽をなめていた。加えて、ゴールまでコースのどこにも水を補給できるような場所はなかった。サイクリング後半、ブレロは半ば脱水状態に陥ってしまい、コース上に木陰をみつければ自転車を倒して道端に座って休むということを繰り返した。おかげで、たった40キロ程度のコースなのに、ゴールするまでに6時間もかかってしまった。
驚いたのは、自動車やオートバイに乗った地元の方が2度ほど、こうして休んでいるブレロをみつけて、わざわざ停車して「大丈夫か?」と声をかけてくれたことである。いつもフランス人の親切さというか優しさには感銘を受けているブレロであるが、まさか車を止めてアカの他人であるブレロに声をかけてくれるとは思わなかった。まあ、明らかに「サイクリングの途中でへばった感」を醸し出していたので、とくに怪しく思われなかっただけかもしれない。
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牧草ロール
ではなく、牧草キューブ?このタイプの牧草ロールは初めてみた。
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コースの途中
でみた結婚式場。元々は個人が所有するシャトーだったのではないかと思う。
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ひまわり畑1
コースのあちこちにひまわりがたくさん咲いていたが、多くは盛りを過ぎていた。早い。これも温暖化のせい?
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ひまわり畑2
もっと早い時期に来れば、道中はこういうひまわり畑ばかりだったろうと思う。
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ひまわり畑3
木陰があるとすぐ休むブレロ。しかし水が切れて口の中が気持ち悪い。
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刈り取られた
麦と、伝統的な牧草ロール。このあと畑はどうなるのかな。
ともあれ、ほうほうの体でバジエージュにたどり着き、祝日でも開いていた町内のタバコ屋をみつけて、炭酸水のボトル(50cl)を2本買った。「涼しい店内で飲んでもいいか」と店主に尋ねたとき、あまりにも喉が渇いていたために店主が「なんだって(comment)?」と聞き返さずにはいられないほどに、まともに声が出なかった。そしてこのように店内で炭酸水をガブ飲みするために時間を使ったことで、午後6時台の電車をつい乗り過ごしてしまった。
仕方がないので、約1時間後の午後7時台の電車が来るまでバジエージュ駅でぼんやりと過ごすことにする。ここには小さな駅舎があったが、戸はしまっていた。実質的に無人駅で、普段から駅舎は開いていないのかもしれない(出発点のモンラベ駅もそんな感じだった)。ブレロは駐輪場の前のベンチに 座り、先のタバコ屋で買ったハイネケン(50cl缶)とポテトチップスをカバンから取り出して1杯やることにした。ハイネケンを飲み終わると、カバンを枕にして駐輪場のアスファルトの上にじかに体を横たえた。他人がみたらきっと変質者っぽく見えただろう。しかしとにかく疲れ切っていたので、行儀よく椅子に座って電車を待ってはいられなかったのである(他人に見られてもいいや、と割り切っていた)。幸い、電車が来る時間まで他人が駅に来ることはなかった。フランス人には他人がどう思おうが自分のやりたいことをやる、という人が多いが、このときばかりはブレロもそんなフランス人っぽくなっていた。
* 概してフランスでは、街の中では自動車は歩行者や自転車に優しく、すぐ停車できるスピードで走っているのだが、田舎では全くそうではない。このコントラストは面白い。自転車を押していようが道の端を通っている以上何も問題ないはずだが、「狭い道なのに邪魔だぞ!」とばかりクラクションを鳴らすようなドライバーがいる。他のドライバーも、総じて田舎ではものすごいスピードで車を走らせている。日本では制限速度が30キロに制限されているような狭い道でも、彼らは80キロ近く出しているように思う。