フランス・オクシタニ地方ライドその4
仕事人間であるブレロがあまり旅行に連れて行ってくれないことに業を煮やした(?)妻氏が、とうとうブレロ3号(3歳児の息子)との2人旅に出て行ってしまった――といっても、今回で2回目だが。実はそれ以前にも妻氏は、ブレロ3号とコリウール(Collioure)に2人で旅したことがあるのである。しかし、コリウールは一応フランスの街で、トゥールーズからさして遠くはない。だが今回は、飛行機に乗っていきなり北欧(デンマーク、スウェーデン、エストニア)まで出かけてしまった。そのため、2人は(コリウールに行った時のようには)すぐに戻ってはこない。
以上の次第で、ブレロはかなり長い間1人で放っておかれることになった。それほど長い期間、彼らと一緒に旅行することはできなかったのである。とはいえブレロにも、小旅行をするくらいの時間ならある。そんなわけで、ブレロは今しかできない泊まりがけの武論富旅を実行してみることにした。
目的地はカマルグ(Camargue)塩田である。カマルグは、フランスにおける3大製塩地の1つであり、料理好きな人であれば「ああ、あのカマルグか」とすぐに思い当たるのではないだろうか。正確にいうとカマルグには2つ塩田があるが、比較的観光しやすいと思われるエグ・モルト(Aigues-Mortes)に行くことにした。エグ・モルトは遠いので前泊しなければならないが、リーズナブルな料金のホテルは比較的大きな都市にしかない。エグ・モルトに行きやすい近辺の都市はニームだったので、かつてニームを観光したときに使用したのと同じホテルを使うことにした。
暖かい季節にニームを訪れたのはこれが初めてである。寒い季節に訪問したときもいい街だと思ったが、新緑がきれいなこの季節に訪れるとさらに良い街だと感じた。
翌朝10時台の電車に乗って、ニームからエグ・モルトへ向かう。平日だというのに、乗客でいっぱいであり、座るところがない(なぜだろう)。エグ・モルトには13世紀の昔に作られた城壁があり、城壁の中には小さな街があって人が住んでいる。この風情はカルカソンヌの旧市街にそっくりである(カルカソンヌは丘の上に、エグ・モルトは平地に城壁が作られているという違いはあるが)。街は碁盤の目のようになっていて、小さな路地が街を縦横に走っていた。観光地化しているが、カルカソンヌほどではない。すごく気にいってしまったが、もうここを再訪することはないだろうなあ…。
当初ブレロは、エグ・モルト塩田の中を約12キロ愛機でサイクリングするつもりでいた。ところが入場券を購入する窓口で、「その自転車では入場を認めるわけにはいかない」といわれてしまった。マウンテンバイク(VTT)でないとダメらしい。事前にホームページをチェックした限りでは、マウンテンバイク「限定」とはハッキリ書かれていなかったのだが…。愛機のタイヤは丈夫なシュワルベ・マラソンだから問題ないと主張したが、「万一のときに責任を負うのはこっちだから」といわれ、取り付く島がなかった。レンタル自転車もすべて出払っていて借りることができなかったので、結局サイクリングは諦めて、ランドネ(ウォーキング)することにした。
覚悟はしていたが、5月末の晴天のカマルグはとても暑い。塩田には日差しを遮るものがほとんどない。確かに、かなり遠出したところでタイヤが万一パンクしたら、戻ってくるまでに日射病になってしまいそうである。もっとも(舗装されていないとはいえ)マラソンのタイヤがパンクするような悪路はここにはなさそうなのだが…。
塩田に入ると、想像していた通りの非日常的な風景が広がっていた。ここは望むなら30キロ程度のサイクリングも可能な、とても広大な塩田だ。塩田の水はピンク色をしており、水がないところは塩が地面を覆い尽くしている。後者は、まるで氷結してうっすらと雪を被った湖面のようだ。
歩いてさほど遠くないところには、積み上げられた塩の小山があり、積み上げのための(クレーンのような)機械があった。小山のうちの1つは、観光者が登って景色を楽しむことが許されていた。実際に登ってみると、四方に拡がるピンク色の塩田がはるか彼方まで見渡せた。
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エグ・モルト城塞
内の町。この道は町の中心部に続く。中心部にはレストランや広場があった。
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塩田内1
積み上げられた塩の山。あれが商品になるのだろうか。
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塩田内2
ピンク色のかん水が美しい。ここに生息する藻が合成するβカロチンがこの色の原因らしい。
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塩田内3
もう一つの塩の山。観光客が登れるようになっている。
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塩田内4
塩の山に登って頂上から見た景色。自転車を持ち込めたらもっと奥まで行けたけどなあ。
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塩田内5
ピッケ運河を眺めて。ここから先は進入禁止だった。ここに来る観光客はいなかった。
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塩田内6
いつの間にか透き通るような青空を飛行機雲が貫いていた。
設定されたコース通りに12キロほど歩こうかと思ったが、自転車はないし、1本しかない帰りの電車を逃すと大変なことになるので、途中からコースを外れて適当に彷徨うことにした。ここには野鳥フラメンゴもやってくるというが、生憎今日は彼らの姿を見ることはできなかった。もっと塩田の奥まで行けば、あるいは見ることができたのかもしれない。
↑今回のライドのショートムービー